大正二年九月不肖就職するや、本学図書館をして権威ある禅宗研究所たらしめんと企図せり。而も当時蔵書僅少にして図書館の名に添はず、補充せんにも標準とすべき書籍目録なし。玆を以て、本書編纂を企て、禅宗研究に資するものは能ふ限り之を渉猟編録し、当該書誌の蒐集に便せしめんとせり。
編纂の動機前述の如し。従って其蒐集の範囲も広範なり。所謂禅書に限らず、苟も其書名内容にして禅宗研究に資するものは、古今を論ぜず、真偽良否を択ばず、刊本写本の別を問わず、悉く之を採録せしめたり。これ広義の禅宗研究に資するの日必ず来るべきを信ぜるが為なり。著者名目録、分類目録、並に禅籍改題の編纂は第二期の事業として他日斯学研究者を首肯せしむるの期あるべし。
計画は大正二年なれども、着手せるは大正八年佐藤泰舜氏図書掛の時に始まる。而も当時は館員僅一名にして、到底事業を進捗するの余裕なく、大正九年小川霊道氏これを継承し、大正十三年佐々木秀幸氏主として之に当り、大正十五年米本堅瑞氏訂正増補之を纒む。小川氏は書名の蒐集編纂に就て其間絶へず両氏を援助せり。
本書に採録せる書名少からざれども、決して是に尽きたるにあらず。遺漏更に倍加するものあるや知るべからず。特に洋書に至りては渉猟充分ならざるの感あり。これ洋書中には禅を主題とせるもの極めて尠なく、検索の易からざるに由る。然るに今未定稿の儘出版せし所以は、
等を認めたるが為にして、此事業完成の手段に過ぎず。
本書出版に際し謝意を表すべきは
本書閲覧者の好意に訴へたきもの
昭和三年一月 駒澤大学図書館長 高田 儀光
(『禅籍目録』、駒澤大学図書館、昭和三年二月十一日印刷、昭和三年二月十五日発行、一頁~四頁)
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