禅籍目録の新纂刊行は禅門興学の基盤を益々鞏固にし、中外の学会に貢献するところ甚だ大にして、禅学の画期的発展に寄与するもの少なからずと信じ、先ず以て祝賛の辞を呈したいと思います。
初版の禅籍目録は、忽滑谷快天学長高田儀光図書館長時代に、小川霊道図書係が大久保堅瑞氏との協力によって編纂し、昭和三年二月十五日に上梓したものであります。爾来この目録が研究学者を指導誘掖し来た効はまことに顕著なものがありました。殊に初版禅籍目録が出版された時は丁度、現有駒澤大学図書館が新装なった年でありました。以来三十三年を経し本年は偶々駒澤大学創立八十周年を迎えるに当り期も同じくしてこの新纂禅籍目録を出版公開するをえました事は正に駒澤大学の進展と共に祝福せられるべきことであり、また永く記念されるべきこととして、重ねて祝意を表すものであります。
初版刊行の時、既にその改訂、増補などの必要を認め、近い将来改編の望を嘱していましたが、幸い小川霊道氏は大正九年四月、図書係就任以来今日まで四十二年、この間、昭和十七年二月、図書館長就任以来二十年間、傍ら禅籍目録改編に心力を傾倒し、初版の再調査、新研究、増補、改訂にあたり、着実に、綿密に、黙々として精進努力し、昭和三十五年、館長の職を退いてからは、鋭意これが完成に向って邁進、有終の美を尽し、竟にこの新纂禅籍目録を大成せられたのであります。氏の半生は實に、禅籍目録と同死同生せられたものというべく、その効績は永く表彰賛頌すべきものであります。
右研究編纂完了に至るまで、曹洞宗宗務庁は賛助に吝かならず、昭和三十年度以来、年々、研究費及び、出版費を宗費予算に計上して賦与せられ、研究出版を助成せられましたので、教の実現をみるに至ったことは、宗門教学の美学としてまことに感謝に堪えません。
又編纂出版の事務に関しましては、図書館員一同、陰に陽に相扶けこれが完成を期し、殊に図書課長櫻井秀雄氏は、末尾収録の「禅籍洋書目録」の作成を担当し、加うるに編纂出版事務一切を掌理し、予期通り進捗完結せしめた事は併せて謝意を表するものであります。
斯の如きと尊い経過の下に完成したこの新纂禅籍目録の内容価値の高進不朽なることは諸賢清覧の認識に一任いたしますが、とまれ、斯学の参究者に好箇の研究資料を提供し得たことは誠に法悦の極みであります。
宗の内外をとわず、宜しく之を活用し禅学研究に百尺竿頭一歩を進められんことを願うものであります。
昭和三十七年一月 駒澤大学総長 保坂 玉泉
(駒澤大学図書館(責任者小川霊道)編集『新纂禅籍目録』、駒澤大学図書館、昭和三十七年六月三十日発行、一頁~二頁)
新纂禅籍目録を発刊してから、斯学研究者はもとより、広く学界人の利用を得、且つ諸般の点について御教示を賜わり、全く感謝の念に堪えません。
道元禅師が「学道の人は、自解を執することなかれ。設ひ会する所ろありとも、若し亦決定よからざる事もやあらん、亦是よりもよき義もやあらんと思ふて、広く知識をも訪ひ、先人の言をも尋ぬべきなり。亦先人の言なりともかたく執する事なかれ。若し是もあしくもやあるらん、信ずるにつけてもと思ふて、次第にすぐれたる事あらば其れにつくべきなり」(正法眼蔵随聞記四の一)との示誡を、これほどまでに深く身に沁みて感じたことはありません。
万全を期するということは、不可能であっても、より完全なものへと精進したつもりでありながら、かなり多くの脱漏を発見し、ここに、本篇発刊後の新刊書及び本篇に漏れたものをあわせ、追補篇を刊行することにしました。
本篇同様、前本館々長・小川霊道氏に、編集の一切を委嘱し、今日その成果を見ることができたもので、誠意あふれる御努力に深く感謝の意を表します。
また、本篇刊行と同時に、京都市天龍寺塔頭金剛院住職・加藤正俊師は、光陰と煩労をいとわず、全篇を丹念に点検されると共に、御蔵書とも対校の上、前後二十回にわたって、詳細かつ懇切なる御教示を賜わりました。これらにより追補と、更に本篇の誤りをもただし、末尾に正誤表を附して正確を期することにいたしました。
尚追補に於て、≪盂蘭盆経≫≪施餓鬼会≫の項を設け、本篇に洩れた参考書を一括して検索しうるように配慮しましたが、就中、書名の上に小圏点・を附したものは、既掲書の重出であります。
ともあれ、今後幾年かあとには、更に追補の刊行も予定されようが、斯学参究者の座右にあって、本書が便宜を供しうるよう念じてやみません。
また本篇が刊行されるや、私立大学図書館協会は、いささかの努力にもかゝわらず、その成果を認めて協会賞を授与されました。身に余る光栄に、深く謝意を表すると共に、一層の研究精進を誓うものであります。
昭和三十九年七月 駒澤大学図書館
(駒澤大学図書館編『新纂禅籍目録―追補―』、駒澤大学図書館、昭和三十九年十月十日発行、一頁~二頁)